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2025.12.04 最近よく水を飲む…?犬の糖尿病の初期症状と早期発見のポイント

最近「たくさん水を飲んでいる気がする」「おしっこの量が増えた」「食欲はあるのに少し痩せてきたかも」など、愛犬のちょっとした変化に気づいたことはありませんか?こうした日常の些細なサインは、年齢や季節の変化によるものと思われがちですが、実は「糖尿病」の初期症状であることもあります。

糖尿病は進行すると命に関わる病気へと発展することもあり、放置するのは非常に危険です。そのため、少しの異変に気づき、早期に動物病院での相談や検査を行うことが大切です。

今回は犬の糖尿病について、症状や原因、診断方法、治療方法、日常でのケアなどを解説します。

■目次
1.犬の糖尿病とは?
2.初期症状と気づくポイント
3.糖尿病の原因となりやすい条件
4.診断方法
5.治療方法と日常ケア
6.まとめ

 

犬の糖尿病とは?

犬の糖尿病は、体内で血糖値を調整する「インスリン」というホルモンがうまく働かなくなることで、血糖値が慢性的に高くなる病気です。

人の糖尿病にはⅠ型とⅡ型の分類がありますが、犬では明確な分類が確立されていないものの、多くは人でいうⅠ型、つまり「インスリンが不足するタイプ(インスリン依存性糖尿病)」に近いと考えられています。

糖尿病を放置すると、血糖値の異常により全身の臓器に負担がかかり、腎臓や肝臓、目、神経などに深刻な合併症を引き起こすことがあります。また、一度発症すると完治は難しいため、いかに血糖値をコントロールして穏やかな生活を維持するかが治療の目標となります。

 

初期症状と気づくポイント

犬の糖尿病は、初期の段階で以下のような症状が見られることがあります。

・水をよく飲むようになる(多飲)
・おしっこの量が増える(多尿)
・食欲はあるのに体重が減っていく
・活気がなく、毛づやが悪くなる
・目が白く濁る(白内障を発症する場合も)

これらのサインは、「年をとったから」「最近暑いから」といった理由で見過ごされがちです。しかし、糖尿病は特に中高齢の犬で多く見られるため、シニア期を迎えた犬には日々の観察が非常に重要です。

さらに病気が進行すると、「糖尿病性ケトアシドーシス」という危険な状態に陥ることもあります。この状態になると、嘔吐、脱水、呼吸が速くなる、ぐったりして動かないといった深刻な症状が現れ、命に関わることもあります。

そのため、少しでもいつもと違うと感じた場合には、早めに動物病院を受診し、定期的な健康チェックを受けることが大切です。

 

糖尿病の原因となりやすい条件

犬の糖尿病には、以下のようなリスク因子が関わっています。

 

<肥満>

体に脂肪が蓄積されると、インスリンの効果が弱くなる「インスリン抵抗性」が起こりやすくなり、糖尿病の発症リスクが高まります。

 

<加齢>

年齢を重ねることで、膵臓の機能が低下し、インスリンの分泌が不十分になることがあります。

 

<ホルモン異常>

副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)や甲状腺機能低下症などの内分泌疾患も、糖尿病を引き起こす要因となります。特に避妊手術をしていないメスの犬では、ホルモンバランスの影響で糖尿病が発症しやすくなることがあります。

 

<慢性膵炎>

膵臓に炎症が続くと、インスリンを分泌する細胞が傷つき、血糖値の調整が難しくなります

 

<遺伝的な体質>

トイ・プードルやミニチュア・ダックスフンド、ミニチュア・シュナウザーなど、一部の犬種では糖尿病の発症リスクが高い傾向にあります。

 

また、食生活や運動不足といった生活習慣も大きく関係しているため、日頃からの健康管理が予防に直結します。

 

診断方法

診断では、まず問診と身体検査を行い、症状がいつから、どのように現れたのかを飼い主様に詳しくお聞きします。そして、以下のような検査を行い、糖尿病の有無を確認します。

・血液検査
・尿検査
・血糖値の測定
・尿中の糖分(尿糖)の確認
・腎臓・肝臓の機能やホルモンバランスのチェック(必要に応じて実施)

また、前述した通り、糖尿病は早期に発見して適切に管理できれば、病気と付き合いながら長く元気に過ごすことも可能です。検査をきっかけに、よりよい健康管理につなげていきましょう。

検査方法について、ご不安な点やご不明点がありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

 

治療方法と日常ケア

糖尿病の治療は、「インスリンの投与」と「食事療法」の二本柱で進めていきます。

 

<インスリンの投与>

インスリン注射は、その子ごとに適切な量を調整しながら毎日続けていきます。投与方法については、獣医師が丁寧に説明し、ご自宅で安全に行えるよう練習しながらサポートいたします。当院では、初めての方でも落ち着いて取り組めるよう、注射の持ち方や針の刺し方、投与のタイミングなど、実際の手順を一緒に確認していきます。

 

<食事療法>

療法食を中心に栄養バランスを整え、決まった時間に食事をとったり、適度な運動を取り入れたりすることで、生活リズムを安定させることが大切です。療法食の種類や選び方については、必ず獣医師の指示に従ってください。

<img src="dog-examination.jpg" alt="診察台の上で伏せたまま聴診器で優しく体調チェックを受ける白い小型犬と動物看護師の様子">

このような日常のケアには、飼い主様のご理解と協力が欠かせません。また、定期的な通院による血糖値のチェックも、症状の悪化を防ぐために非常に重要です。

さらに、糖尿病が重症化し「ケトアシドーシス」などの合併症を起こしている場合には、入院のうえで点滴やインスリン投与などの緊急治療が必要となるケースもあります。

なお、当院では、内分泌や栄養、眼科(白内障の合併など)といった分野の獣医師が連携し、チーム医療を通じて糖尿病の犬を多角的にサポートしています。病気と向き合う飼い主様の不安を少しでも和らげるよう、細やかな診療を心がけています。

 

まとめ

犬の糖尿病は、早期に気づいて適切に治療を始めれば、長く穏やかに過ごせる病気です。「よく水を飲む」「尿が多い」「痩せてきた」などの小さな変化を見逃さず、「いつもと何か違う」と感じたタイミングで動物病院に相談することが、愛犬の健康を守る第一歩になります。

当院では、飼い主様と愛犬に無理のない治療計画を一緒に考え、寄り添った医療をご提供しています。「まだ様子見でいいかな」と迷っている方も、どうぞお気軽にご相談ください。糖尿病の早期発見とケアの積み重ねが、愛犬の健やかな未来につながります。

 

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