2025.06.05 【獣医師が解説】高知県の犬や猫のノミ・マダニ予防完全ガイド|危険な感染症と効果的な予防法
ノミやマダニは、犬や猫にとってただの「かゆみの原因」ではありません。実は、命に関わる危険な感染症を媒介する害虫であり、放置すると深刻な健康被害につながることがあります。
実際に当院の近隣病院でも、4月末にマダニの付着事例が確認され、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)が発生しました。そのため、病院付近のエリアでは、マダニ予防の重要性が一層高まっています。
また、「うちは完全な室内飼いだから大丈夫」と安心されている飼い主様も少なくありませんが、実は室内でも感染のリスクは潜んでいるため注意が必要です。
今回は犬や猫のノミ・マダニについて、病気の危険性から、効果的な予防方法、種類ごとの予防薬の特徴、さらには付着してしまったときの対処法などを解説します。
■目次
1.ノミ・マダニが媒介する危険な病気
2.ノミが媒介する感染症
3.室内飼育でも必要なノミ・マダニ予防
4.効果的なノミ・マダニ予防方法
5.ノミ・マダニの生態と活動時期
6.ノミ・マダニが付着した場合の対処法
7.まとめ
ノミ・マダニが媒介する危険な病気
ノミやマダニを介して、以下のような感染症にかかるリスクがあります。
<SFTS(重症熱性血小板減少症候群)>
マダニ(特にフタトゲチマダニ)によって媒介されるウイルス性の疾患で、犬や猫だけでなく人にも感染します。初期には無症状であることが多いものの、徐々に以下のような症状が現れ、重篤化すると命に関わる危険性があります。
・発熱
・元気消失
・食欲不振
・嘔吐や下痢
・ふらつき
特に猫では重症化しやすく、致死率が60%を超えるとも言われているため、極めて注意が必要です。
<バベシア症(犬)>
マダニに吸血された際に感染する原虫による疾患で、赤血球を破壊されることで貧血を引き起こします。主に以下のような症状が見られます。
・食欲低下
・粘膜の蒼白(口の中が白くなる)
・元気消失
・発熱
これらの症状が進行すると、命に関わることもあります。また、バベシア症は高知県を含む西日本で多く報告されており、予防が特に重要です。
ノミが媒介する感染症
ノミは「ただのかゆみの原因」と思われがちですが、実は以下のような深刻な感染症を引き起こすことがあります。
<ノミアレルギー性皮膚炎>
ノミに刺された際、唾液に対するアレルギー反応により、皮膚に強いかゆみや赤み、脱毛などの症状が現れます。特に背中や腰、尻尾の付け根などに症状が出やすく、放置すると掻き壊してしまい、二次感染につながることもあります。
<瓜実条虫症(うりざねじょうちゅう)>
ノミが媒介する寄生虫で、犬や猫が毛づくろいの際にノミを飲み込むことで感染します。多くの場合は無症状ですが、重度の寄生では嘔吐や下痢、血便が見られることもあります。人にもうつる可能性があるため、注意が必要です。
このような感染症は、予防によって防ぐことが可能です。予防を怠ると、犬や猫だけでなく飼い主様の健康にも影響を及ぼすため、日頃からの対策が何より大切です。
室内飼育でも必要なノミ・マダニ予防
「うちは室内飼いだから、ノミやマダニの予防は必要ない」とお考えの飼い主様も多くいらっしゃいます。しかし、実際には室内飼育でも感染リスクはゼロではありません。
たとえば、飼い主様の服や靴に付着したノミやマダニが室内に持ち込まれるケースがあります。特にマダニは小さく、目視で確認するのが難しいため、気付かないうちに動物に付着することもあります。一方、ノミは網戸の隙間や窓から侵入することがあるため、屋内での発生も珍しくありません。
さらに犬の場合、日常の散歩中に公園や草むらなどでマダニが付着することが多く、完全な屋内飼育でない限り予防は必須と言えるでしょう。
一度ノミが室内に侵入してしまうと、驚異的なスピードで繁殖し、駆除が非常に困難になります。被害を未然に防ぐためにも、屋内や屋外を問わず、すべての犬や猫に予防を行うことが重要です。
効果的なノミ・マダニ予防方法
ノミ・マダニ予防の基本は、月に1回の予防薬の投与です。代表的な予防薬の種類と特徴は、以下が挙げられます。
<スポットタイプ>
皮膚に直接垂らすタイプで、内服薬が苦手な犬や猫に向いています。首の後ろなど口が届かない場所に投与することで、誤って舐めてしまうリスクを避けられます。投与後は一定期間、シャンプーや雨に濡れることを避けてください。
<経口タイプ(錠剤・チュアブル)>
錠剤タイプはアレルギーがある犬に使用可能で、フードに混ぜたり投薬補助剤を活用したりする方法もあります。
チュアブルタイプはおやつ感覚で食べてくれる子が多く、投薬に不慣れな飼い主様にもおすすめです。
<オールインワンタイプ>
フィラリアやノミ、マダニをまとめて1回でカバーできるタイプです。複数の予防が一度にできるため、投薬忘れが減り、管理が楽になるというメリットがあります。
また、当院では、毎年「フィラリア・ノミ・マダニ予防キャンペーン」を実施しております。予防を始めるにはちょうど良い時期ですので、ぜひお気軽にご相談ください。
※キャンペーンの時期は事前にご確認ください。
犬のフィラリア予防について|適切な期間や予防薬の選び方などはこちらから
ノミ・マダニの生態と活動時期
ノミとマダニの活動は一年中見られますが、特に春から秋にかけて活発化します。近年では気温上昇の影響で活動期間が延び、冬でも油断できない状況になってきています。
<ノミの生活環(ライフサイクル)>
ノミは、動物に寄生するとすぐに吸血を始め、2〜3日以内に卵を産みます。卵は地面に落下し、数日で孵化して幼虫になります。その後サナギになり、環境が整うと羽化し、再び動物に寄生します。1匹のノミが大量に繁殖するサイクルは非常に早く、早期の予防が必要です。
<マダニの生活環>
マダニは「卵 → 幼ダニ → 若ダニ → 成ダニ」と成長し、それぞれの段階で異なる宿主に寄生して吸血します。吸血後は地上に落ちて脱皮を繰り返し、成ダニになると産卵します。マダニは草むらや山だけでなく、公園や庭先でも生息しているため、注意が必要です。
実際に当院でも、4月末に複数のマダニ付着事例が確認されました。これを受け、通年での予防の必要性がますます高まっています。
ノミ・マダニが付着した場合の対処法
万が一、犬や猫にノミやマダニが付着していた場合は、自己判断せず、すぐに動物病院に相談してください。
<ノミの場合>
まずは、駆除薬の投与が必要です。あわせてシャンプーで卵やフケを洗い流すことも大切ですが、家の中の環境整備も行いましょう。掃除や熱湯消毒、駆除スプレーなどで家庭内の再感染を防ぐことが大切です。
<マダニの場合>
無理に引き抜こうとすると、頭の部分が皮膚に残ってしまい、感染症のリスクが高まります。そのため、専用の器具を使うか、必ず動物病院で除去してもらいましょう。特にSFTSやバベシア症のリスクがあるため、見つけた際は早急な受診をおすすめします。
まとめ
ノミやマダニの予防は、犬や猫の命を守る健康管理の基本です。ただの害虫と考えていると、思わぬ感染症にかかってしまうリスクがあります。しかし、これらは予防をすることで、未然に防げます。
また、予防薬にはそれぞれ特徴があり、犬や猫の性格や体質に合ったものを選ぶことが大切です。迷った場合や不安がある場合は、動物病院に相談しましょう。
当院でも、ノミ・マダニ予防に関するご相談を随時受け付けております。お困りの際はいつでもお気軽にご相談ください。
愛犬や愛猫の健康と命を守るために、予防を習慣にし、安心できる毎日を送っていきましょう。
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